春はあけぼの きみはすべて

きみのものだから愛おしい

ジャニーズは「男」ではない

 

 私はどうにも男性が苦手だ。

 

 「男性」なんて大まかにひと括りにして嫌ってしまうのはちょっとだめだろうと思っているのだが、これを克服するのがなかなか難しい。

 男性嫌いが理由でサークルを辞めたりするレベルでこじらせているし、男性というだけで「うっ……」と思ったりすることもある。出来ることなら女子に囲まれて女子と楽しくお話をして一生を終えたい、くらいの勢いである。

 そんな私が、ジャニーズを応援しているというのは、一見すると矛盾しているように思われるかもしれない。男が嫌いなのに男かしかいないジャニーズにどっぷりはまるなんてバカげている、というかそういうこと言いつつなんだかんだで男好きなんだろう、と思われても、まあ仕方ない。

 けれど、私の中では「男性が嫌い」と「ジャニーズが好き」は共存し得る事柄である。

 

 なぜなら、ジャニーズは「男」ではないからだ。

 

 これは別に、一般的な事実というわけではない。あくまでも私の心象世界の話で、これから私が書きたいことは、個人的なジャニーズの捉え方の話である。

  ちなみにここで私がいう「男」というのは、生物学的な意味の「男」というよりは、女性を性愛の対象としている存在、ぐらいの意味合いである。DNAがどうとか生理的に無理とかそういう話ではなく、社会的な意味で、ということである。

  そして私はタイトルからここまで、「ジャニーズは男ではない」と謳っているけれど、もっと突き詰めて言えば、「アイドルは人間ではない」とすら思っている。アイドルは人間ではないもっと上位の存在なのだ。だからそんな特定の女を性愛の対象としたりなんかしないし、性別などという些細なものには囚われていない存在なのである。

 

 もちろん、ジャニーズだって恋愛はするだろう。いや、ジャニーズの中にだって女性に恋愛感情を抱く人もいる、というニュアンスが正しいだろうか。

 彼女がいたって不思議ではないし、結婚願望だって秘めているかもしれない。

 けれどそれは、あくまで彼らが「男」である場合の話である。私には到底知る由のない、素の「男」であるときの彼らジャニーズがどう振る舞おうと、私には関係のないことである。

 「男」である彼らは彼らであって彼らではない。アイドルの彼らにとてもよく似たただの「男」で、他人である。

 アイドルである彼らジャニーズは、アイドルである間は「男」ではなく、「アイドル」を全うしてくれる。人間ではない何か尊い存在として、私たちの前に姿を現してくれる。

 彼らの吐き出す愛の言葉は、特定の誰かに向けられたものではなく、ファンという巨大な共同体に向けられた博愛に満ち溢れたありがたいお言葉だ。彼らがアイドル雑誌などで発言する「理想の恋人像」の話は、もしも彼らが「男」だったら、と仮定した場合の話なのだ。

 だから私は、安心してジャニーズを応援することができる。

 

 私の中には基本的に、ジャニーズに対しては「好き」と「興味ない」の2択しか存在しない。しかし、もしもこの子が「男」だったら絶対に嫌いだろうな、と思うジャニーズはたくさんいる。

 というか、女性を恋愛対象にしている男性が、女性に向けて愛を囁く、というのが男性アイドルの疑似恋愛の仕組みである。そんな疑似恋愛をコンテンツとして送り出す宿命を背負っている彼らアイドルのことを、まあ嫌いにならない方が難しいだろう、とは思う。私が苦手なのは、女性を性愛の対象とする生き物なのだから、これはもう仕方がない。

 

 「恋愛マスター」と呼ばれているタイプは基本的に無理だ。なぜかそういうときの甘いセリフって俺様系に特化したタイプが多いものだから、握りしめたリモコンを思わずぶん投げそうになってしまう。

 「守ってあげる」みたいな思想も厳しい。勝手に女性を弱者だと決めつけるのは勘弁してほしいとか考えてしまう。こういう発言を聞くと、随分上から物を言うじゃねーか、とケンカ腰になるのを避けられない。

 「結婚するなら、料理が出来る人とがいい。出来なくてもいいけど、せめて練習はしてほしい。やっぱり奥さんが作ってくれるご飯が食べたいし。練習には付き合うよ!」みたいなのとかもう「ああああ!?」と声を荒げるレベル。こういう答え方が模範解答となっているのかわからないけれど、割とこれ、いたるところで見かける気がする。歩み寄ってるつもりかもしれないけれど、正直後半は蛇足だと思う。前半だけならただの「嗜好」で済むのだが、後半のせいで一気に「規範」が見え隠れするのがしんどすぎる。料理が食べたければ自分で作れよ。

 

 こういう発言を見るたびに「うわこれ男だったらきつ……しんど……」と我に返ってしまうので、もう出来れば恋愛系の質問をアイドルにぶつけるとかいう無粋な習慣はなくなればいいのに、とか思ったりもする。どうせ適当に答えてるんだろうし!*1

 

 しかし一方で、アイドルである彼らが理想の「男」に擬態して、ファンを喜ばせようとしてくれている健気な姿には心惹かれるのも事実である。本来であれば「男」である彼らが、アイドルを全うするために、「男」に擬態する、という歪な構造は愛しいと思う。

 この場合、アイドルである彼らが本来の「男」に戻るというのとは違うのだと私は考えている。彼らの口から語られる好みの女性の話や愛の言葉は、ファンの需要を考慮した上で彼らが作り上げた幻想であり、仮面を被っている状態にすぎない。あくまでも理想とされる「男」に擬態しているだけだ。(どちらかというと飼っているペットの話をしているときの方が素の「男」がにじみ出ていると思うのだけれど、これはさすがに邪推がすぎるのでこの話はやめておく。)

 あくまでもアイドルは、「男」に擬態しているだけの、人間ではない何かである。

 

 理想に近づけるために普段から意識して言動をそっちの方に寄せているアイドルにわしはとてもときめく。やっぱり何をおいても中島健人くんは最強で最高のアイドルだと思う。正直なところ彼の甘い言葉にはときめかないけれど、彼のプロアイドルとしての姿勢には痺れる。「男」としては正直かなーり苦手な部類だけれど、アイドルとしては本当に素敵な人だと思うのだ。

 それから、中間淳太くん。彼もかなりアイドルだし、同時にかなり苦手な部類の「男」である。「浮気は許さない」という熱いスタンスは、女性への独占欲を示しているため、ファンの女子を喜ばせるには最適なのだろうけれど、まあ重い、よな……。

 

 しかしそんな私も、「男」として好きだなあと思うアイドルもいる。

 というよりは、「男」を感じさせないから好きなのかもしれないのだけれど、私は岩橋玄樹くんのスタンスがいちばん好きだ。ときめくというよりは、ほっとすることができるから好きなのかもしれない。

 彼は自分の仕事や夢に関しては頑固だし熱いし頼りになるのに、こと対人関係となると途端になよっとする。女性に媚びるように「男」を演じようともせず、かっこつけようともせず、男だろうが女だろうが誰にだって甘えていくスタイル。相手が男だからとか女だからとかなく、皆等しく岩橋玄樹様の執事にされてしまう感じがたまらない。

 それから、マリウスの博愛主義っぷりも好きだ。男性も女性も等しく愛で包んでくれるようなマリウス様は高貴で清らかで麗しい。

 中性的で、人間を男女で分けて考えないような人が私は好きだ。ただそういう人は、甘い台詞にリアリティが欠けてしまい、女性をときめかせることは難しいだろうと思われる。ところが岩橋くんとマリウスのすごいところは、そうであるにも関わらず甘い台詞を躊躇なく囁き、ファンの心をしっかりと射抜いているところだ。「男」としても「アイドル」としても最高とか、これはもうリア恋枠にせざるを得ないのでは、と思うのだが、まあ結局私にはリア恋枠はいないので、ここには少しばかり謎が残る。またいつかこれについても言及してみたい。

 

 ジャニーズは皆等しく「男」ではない何か別の生き物で、ジャニーズは皆等しく理想の「男」に擬態する。そのときジャニーズではない場合の彼らの素は私たちの前に晒されることはない。しかし、彼らの提示する理想の「男」像から、彼らの素が透けて見えてしまうことはある。そしてその「男」っぽさに私はがっかりさせられてしまいそうになる。だからそういうときは心の中で「○○くんがジャニーズで良かった!」と呟いて忘れるのだ。彼らは「アイドル」であって、「男」ではない。素の部分なんて見る必要はないのである。

 

 「ジャニーズが好きなの?まじで?付き合えるわけないじゃん時間の無駄だよ諦めなよ!」とか言ってくる勘違い連中には、「ジャニーズと付き合ってどうすんだよ相手はアイドルであって男じゃないからね!?人間じゃない何か尊い概念だから!!付き合うとか俗っぽいこと言わないでよ!!」とかいって捲し立てるときっとドン引きされると思うので、そういう場合はこの記事を送りつけて、「こういう頭おかしいジャニオタもいるから、付き合うだけがゴールじゃないらしいよ……」と遠い目で語ってあげてください。

 

 

*1:サンプルが適当宇宙人の平野紫耀くんでは説得力に欠けるが、平野紫耀くんの恋愛系の回答はすさまじく適当である。見るたびに答えが違うし、「恋愛に興味ないです。あ!でもファンの子には興味あるよ♡」とか取ってつけたようにファンサービスに走ったりもするので、もう嘘がばればれである。よって他の子もまあたいがい本気で回答してはいないんだろう、という決めつけ。